1. 経緯
2004年11月19日、Iowa州 Amesにある米国農務省(USDA) の National Veterinary Services Laboratory(国立獣医学研究所, NVSL)で、Bio-Rad Laboratories社製のELISA 法によるスクリーニングでBSEを疑われた3頭の牛の脳の確認検査が実施された。
米国の標準確認検査法であるImmunohistochemistry(免疫組織化学検査, IHC法)では3検体とも陰性であったが、同時に実施された開発中の改良型迅速IHC法では1検体が陽性になった。 しかし、その時点では検査の有効性の検討や、他の検査法での再確認はされず、疑惑の牛は陰性と報告された。
2005年6月、USDA内部監査局 Inspector General の Phyllis K. Fong 女史が、少量冷凍保存されていた7カ月前の検体に対し、高感度のウエスタンブロット法による検査を行うことを提言した。
6月10日、NVSL 内でのウエスタンブロット法検査で1頭は陽性と判定されたが、 再度確認検査を準備中で、その検査結果は来週後半に出る見通しと発表。
(英国や日本では、ウエスタンブロット法で陽性の場合は、他の検査法では陰性でも、患畜と認定される)
6月16日、USDAは、国際獣疫事務局(OIE)のBSE照会機関である英国の Weybridge 獣医学研究所に、先週陽性と判定された牛の検体の確認試験を依頼した。同日、USDAの担当官が検体を携え英国に向けて出発した。
Weybridge研究所では、ELISA 法、IHC法、OIEのウェスタンブロット法、NaTTAウェスタンブロット法、プリオニクス・ウェスタンブロット迅速スクリーニング法で検査し、全ての方法で陽性と報告した。
6月24日、Mike Johanns USDA長官が、米国産としては初めての BSE 患畜と認定し、公表した。
2. 問題点
米国は2003年12月にワシントン州で発生した BSE患畜はカナダ産ということで、「BSE患畜の飼育国は汚染国」という国際的な定義を無視して、それ以降も米国は BSE 清浄国と主張してきた。 Fong 女史の指摘で再検査しなければ、米国はまだ米国産の牛からはBSE は発生していないとの主張を堅持する事が出来た。(米国内では彼女が再検査を示唆した権限に疑義を挟むむきもある。)
今回の患畜認定迄の迷走は、米国の BSE 対策が、これまで危惧されてきた牛のトレーサビリティの欠如と検査頻度の低さの問題だけでなく、確認検査の精度と結果の認定にも欠陥がある(あった)ことを露呈した。
2.1. 検査法
2..1.1. ウエスタンブロット法
グローバルスタンダードの高感度のウエスタンブロット法は2003年の1頭目の患畜発見の際には使用されていたが、2004年11月の時点では、感度の低い IHC法が唯一の確認法として使用されていた。
この経緯についてUSDAの説明はないが、米食肉業界などが、ウエスタンブロット法の採用に反対していたことから、ウエスタンブロット法を使用しないよう政治的な圧力があったと推察出来る。USDAの高官には畜産業をバックにした人が登用されているので業界の意向は容易に反映される。
皮肉な事に、全米肉牛生産者協会は6月17日、USDAがBSE疑惑牛を検査結果の確定前に発表したことについて「業界は甚大な風評損害を被っている」と、USDAの対応を強く批判した。ウエスタンブロット法を併用していれば、問題の牛は2004年11月にBSE患畜と確定していた。
USDAは、今後は ELISAで陽性になった検体は全て IHC法とウエスタンブロット法の両方で確認すると発表したので、IHC単独での判定の非は認めたことになる。
2.1.2. IHC法
USDAのAnimal and Plant Health Inspection Service(APHIS)は、2005年6月24日付けの モThe IHC Test Variabesモ という Factsheet で、IHC 法は、
(1) 市販の標準化されたキットの検査法ではない。幾つかの抗体のタイプ、試薬があり、検査の感度はこれらの因子に影響される。
(2) 感染の程度が弱く、異常プリオンの蓄積が少ない場合には検出が難しい。
(3) 使用する試薬、反応薬、温度、抗体との反応時間等の染色の条件によって、異なる結果が得られる。
と、感度は低く、普遍性のない検査法である事を認めた。
しかし、2004年11月の検査の際とは異なる抗体を使用した再検査では弱陽性となり、 Weybridge研究所でのIHC法でも陽性となったことから、問題は全てのIHC法ではなく、NVSLで確定検査に採用されていたIHC法の感度にあったことを示唆している。専門家からはNVSLで使用している抗体が古いタイプなので、検出できなかった可能性が指摘されている。
NVSLが感度の低い抗体を採用した経緯は説明されていないが、国際的なゴールドスタンダードと比較検定していない標準検査法に固執したNVSL は照会機関として機能していなかった。開発段階とはいえ、改良型 IHC法で陽性反応が出た場合、検査の有効性の検討や、内部での他の検査法での再確認、さらにWeybridge 研究所等への確認検査依頼の行動をとるべきであった。
英国との検査結果の食い違いについて、USDA は「感染牛の感染の程度が弱かったか、病原体のプリオンの分布に偏りがあった」と釈明しているが、これは感度の低いIHC法だけを確認検査法としてきた米国では、BSE感染の程度が弱くて異常プリオンの蓄積量が少なく空胞ができていないか、脳組織検体中の異常プリオンの分布に偏りがある牛は陰性と判定され、食肉として消費されるか、肉骨粉となり飼料にリサイクルされていた可能性があったことを認めたことになる。
2.1.3. 検査法に対する認識
上記の Factsheet では、”In November 2004, a sample from this animal returned inconclusive for BSE on a Biorad screening test.” との記述があるが、Biorad 法は迅速スクリーニング用であり、疑わしい牛の検体を漏らさず次の確認試験に廻すのに必要な性能は感度が高いことが求められ、”conclusive”であることは求められていない。 ”conclusive/inconclusive” という表現は確認試験のIHC法の結果に対して使用されるべきである。 別の Factsheetでも同様な記載があるので、APHISではスクリーニングと確認検査を混同しているものと推察される。
また ”the level of infectivity”という表現も二度使われているが、問題は「伝染性の強さ」にはなく、「感染(発症)の程度」にあるので ”the level of infection” と表現するべきである。 感染に関する初歩的知識のないスタッフの作文を校閲していないAPHISの情報はますます信頼を失う。
2.2. 追跡調査
2003年の1頭目の BSE患畜認定の際もUSDAの発表が二転三転して米国での家畜のトレーサビリティの困難さが浮き彫りになったが、米国では耳標識等による個体識別・追跡システムが整備されていないので、DNA鑑定で出自牛群を特定している。
現行計画では2009年に個体識別・トレーサビリティシステムが導入されることになっているので、2009年迄米国内での全頭識別はできない。また個体識別システムが導入されても、導入以前に生まれた牛の個体識別の情報は欠落している。これでは米国でのBSE監視態勢は汚染のピークが過ぎてから整備される事になる。
今回も6月24日の発表当初、患畜は「米国で生まれた少なくとも8歳以上の雄肉用牛」とされていたが、その後「テキサス州で生まれた」と判明した。6月29日になって、テキサス州の3D/4Dペットフード工場に歩行困難な状態で搬入された「12歳前後の雌牛」と発表された。 7月中旬の現在、まだ正確な年齢は公表されていないが、飼育されていた牧場の擬似患畜の検査は全て陰性と報告されている。
この牛は搬入時に糞尿にまみれていたために間違った牛の種類として記録され、また検体組織は 5頭分一緒に保管されたと報道された。ペットフード用屠殺場とはいえ、種類が識別出来ないほど汚れた牛が解体されるという衛生管理、またその後の検体の管理システムともに杜撰で、このような屠殺場が存在すること自体が米国の牧畜業の問題点である。
患畜は8歳以上の牛なので1997年に肉骨粉の反芻動物への投与が禁止される以前に生まれ、汚染された肉骨粉を投与された可能性があるとしている。 しかし、この患畜がいつ生まれたかを特定出来ない限り、摂取した飼料についての追跡調査は困難である。
今回の患畜の異常プリオンの性状はすでに検討されていて、2003年のカナダ産とされた1頭目の英国型ではなく、フランス型と報告されている。
このプリオンの型の相違は重大な意味を持っていて、この患畜は1頭目と異なる汚染された飼料、添加物を摂取、感染したと結論出来、米国内には、カナダ産の BSE汚染牛ならびに牛由来飼料が輸入された北西部での潜在的な汚染だけでなく、別ルートの汚染源が存在する(した)ことを示唆している。
2.3. 検査頻度
米国のBSE監視は確認検査法の改善だけでは充分ではない。これ迄も指摘されてきたように米国のBSE検査頭数は少なく、監視態勢の不備は否定出来ない。
昨年迄の検査数は年間2万頭前後と低く、昨年6月からはやや強化されて38万頭検査されたが、2004年度に食肉加工され、一般食品や飼料向けに供給された3,600万頭の牛の約1%にしか過ぎない。
英国をはじめEUでは、生後24〜30カ月以上の牛は全頭検査され、毎年1,000万頭が検査されている。これは4頭に1頭の割合に相当する。 日本では年齢にかかわらず全頭検査され、毎年120万頭が検査される。
米国は 2004年6月からの検査強化で、38万頭から疑陽性が3頭、感染牛1頭見つかったが、しかし、年間 40-50万頭と推定されるダウナー牛や農場での死亡牛の検査は徹底していない。99%の牛は検査を受けず、BSE検査法の感度の低さも考慮すると、実際の BSE 患畜数はこれ迄確認された2頭よりずっと多いものと推測される。これら見逃された患畜の肉は食用として市場に出荷されたものもあり、非食用部位は肉骨粉として、1997年以前は公然と牛の飼料として利用され、その後は鶏、ブタやペット動物の飼料として利用されている。
これ迄の USDA の検査には、BSE に汚染されていないことを科学的に立証する姿勢は見られない。
食品安全検査局(FSIS)は、2002-2004年度に中枢神経症状のために屠畜場で 680頭の牛が屠畜を拒否されたが、検査されたのは162頭だけだったと発表。 OIGは、これは検査の要件が混乱しており、またAPHISとFSISの間の協調がないためと弁解したが、屠畜を拒否され、検査されなかった牛の行方には触れていない。 USDAは2004年5月、中枢神経組織症状のために拒否されたすべての牛を、月齢に関係なく検査するように要求する指令を現場スタッフに出したが、FSISとAPHISは、これが遵守されるように保証する十分な管理監督態勢を開発する必要があると言う。
また農場で死んだ牛からのサンプルを取得する制度が導入されていない。この死亡牛からの検体は死因の疫学的解析に重要だが、牧場経営者は、検査で好ましくない疾患と診断され、牛の移動を制限される可能性を考えると通報を躊躇う。同様に歩行障害のようにBSEを疑わせる症状が現れた牛を屠殺場に搬入するか、牧場内で処分するかは経営者の判断次第である。
BSE検査の年齢要件が標準化されていないための混乱も指摘されている。現在の検査指針によって20ヵ月以上、24ヵ月以上と異なり、拡充サーベイランス計画では30ヵ月以上となっている。この混乱のために、一部の牛が検査されていない可能性がある。
2.4. 飼料規制
1997年に反芻動物飼料への反芻動物肉骨粉の使用が禁止されたが、米国では現在でも牛の肉骨粉を鶏、ブタやペット動物の飼料に使うことは禁止されていない。 従って飼料工場で牛用飼料との交差汚染が発生するリスクがある。実際に交差汚染事故が発生したケースでは、製造から製品回収までに一年間のタイムラグがあった。輸送中、牧場での使用の際の交差汚染も考えられる。
しかも、禁止措置の監督は徹底していない。FDA は大部分の企業は規制を守っていて、2000年度の違反企業は5社だけだったと報告した。だが、FDAは牛飼料のサンプル採取・保管を義務づけてはいないし、検査官は飼料そのものの検査はせずに、施設・設備の調査と出荷記録文書の審査だけである。
FDAによるレンダリング・飼料工場の検査の2006年6月の報告でも
26%が反芻動物飼料を扱っており、そのうち、
2.6%に改善命令が出された。
従って 1997年の禁止措置で飼料由来の BSE 汚染の危険性が完全に消滅したわけではない。
3. 感染と発症
発表・報道ではBSE「感染」と表現されるが、BSE 患畜は過去に BSE プリオンに「感染」した個体が、2-10数年の長い潜伏期間を経て「発症」したものであり、脳症の症状が現れた時点で感染したのではない。 現在使用されている検査法では生体内の異常プリオンの蓄積は測定できないので、「感染」を診断することはできない。
感染したがまだ発症していない牛体内の異常プリオンの蓄積量は、異常プリオンの摂取量、摂取時期、牛の個体差等の因子があって一概には推計出来ないが、長期間をかけて徐々に増加し、発症が近づいた時点では既にかなりの量が蓄積していると推察される。従って現在の米国の牛屠殺数の 1%程度の検査頻度では、99%は全く検査されずに解体されるので、発症寸前ならびに発症していても外観上問題のない牛の肉、臓器が食用になり、人が異常プリオンで汚染される可能性は高い。 (これは日本も同様で、全頭検査でも異常プリオンの蓄積量の少ない行動に異常がなく、脳組織に異常のない牛は排除できず、その牛の肉は食肉として流通する。)
現時点では人が少量の異常プリオンを摂取した場合の、長期潜伏後のvCJD発症の疫学的データはない。人間は80年以上の寿命があるので、牛その他の動物でのデータから推測するのは科学的ではない。
4. FDAの対応
6月24日、FDA は今回のBSE 発見は監視態勢が機能している証拠と発表した。 しかし現実は逆で、NVSLで採用されていた確認検査の感度が低いという事は、他の患畜を見逃してきた可能性が大きく、米国のBSE監視が不適切であったことを示唆している。
これ迄のFDAの牛等由来医薬品原材料に対する対策・対応を追ってみると、一貫性を欠いていることが明白である。
The Center for Biologics Evaluation and Research (CBER) は1991年にBSE 汚染に対する注意を呼びかけ、1993年と1996年に FDA の管轄下にある人用の医薬品等の製造業者にBSE汚染国で生まれたもしくは飼育された牛由来の原材料を使用しないよう通達した。1998年にはCBERは、ワクチン製造業者にUSDAの BSE汚染国リストにある国原産の牛等由来原材料を使用している場合は、汚染国リストにない国の原材料に切り替えるよう通達した。2000年には原産国不明国の牛等由来原材料も切り替えるよう通達し、切り替えは2001年末迄に完了した。
しかし、2003年にカナダで BSE が発生した後、FDAはカナダからアメリカに年間170万頭の生体牛が輸入され、牛由来原材料も大量に取引されているので、カナダで生まれ、飼育され、屠殺されたのではない家畜を識別するのが困難であること、また両国で同じような反芻動物飼料への反芻動物肉骨粉の使用禁止措置が採られていることを理由に、牛由来原材料のカナダから汚染国リストにない国への切り替えは通達しなかった。
この対応の変化は重大な意味を持つ。先ず、FDAは、米国産の家畜のトレーサビリティはなく、カナダ産と識別出来ないことを認めた。次いで、USDAの BSE汚染国リストに含まれているカナダの牛由来原材料の使用は認められ、他のBSE汚染国産ならびに原産国不明の牛由来原材料の使用は無条件に禁止されるという矛盾を容認した。
米国で BSE が発生してからもFDAは米国とカナダ産の牛由来原材料の使用を認めている。
BSE汚染国である米国とカナダ産の原材料の使用を正当化する根拠として、FDAはワクチンを接種する利益に比べ、BSE プリオンに汚染されたワクチンから感染し vCJDを発症する確率は低いとしている。
これは一見合理的であるが、論理に飛躍がある。先ず、米国・カナダ産と BSE清浄国産の原料の安全性の差を無視し、より安全なBSE清浄国からの原材料確保について触れていない。
(欧州委員会の Geographical BSE-Risk(地理的 BSE リスク評価、GBR)ではクラスI とクラスII は区別されているが、厚労省はクラスIとIIを区別せずに BSE 発生リスクの低い国として表にした。 米国・カナダは GBR では当初からクラスIIと評価され、BSE 発生の危険性は否定されていなかった。 BSE 清浄国でもクラスIの国原産の原材料の方がより安全であるという認識は常識である。)
ワクチンによる感染症予防の費用効果は、予防効果と重症な副作用を天秤にかけて議論する。(日本でも日本脳炎の副作用が問題になり、日本脳炎罹患者数と予防接種の副作用による脳炎・脳症患者数が比較され、マウスの脳組織成分を使用する旧来のワクチンは廃止されたのは耳新しい。)
この論法では、米国は生物学的製剤からの異常プリオンで vCJD を発症し、死亡する人の数が、予防接種の副作用による脳炎・脳症患者数に迫らない限り、BSE汚染国である米国とカナダ産の原材料の使用を継続することになる。英国でさえ2005年4月現在の vCJD 発症は150例で、そのうち生物学的製剤が原因と疑われる例はない。従って、米国は英国その他の BSE 汚染国の牛由来原材料の使用を無条件に禁止する根拠はない。
5. 日本の反応
食品安全委員会プリオン専門調査会座長の吉川泰弘東京大教授は「米国が(自国生まれの)BSE汚染はないと主張していても、(日本の)専門家はみな汚染があると思っていた。それを前提に汚染のレベルを議論してきているので、1頭出たからといって科学的な検討には影響はない」と冷静に受け止めている。
石原葵・農水事務次官は6月27日の定例会見で、「(米国で)何頭かは感染していることは前提条件」と、米国産牛の BSE 汚染確認にもかかわらず寛容な態度を表明した。
これらの見解は、米国から今後複数のBSE発生が報告されても、米国産牛肉の輸入再開は既定路線である事を示している。
米国内でBSEが発生する迄はUSDAのNational Center For Import And Export (NCIE)が作成した BSE汚染国リストに記載された国からの牛肉の輸入を禁止したのは防疫の為と説得力があったが、2頭目の発生が確認されても、日本への牛肉輸出再開には血眼になり、日本等からの牛肉等の輸入は相変わらず禁止している米国政府に対し、日本は何ら指摘していない。
2頭目のBSEが確認された週でも米国産の牛肉は安全とお題目のように唱え、日本に輸入再開を迫る米国政府に対し、寛容な態度を示す日本の国際政治音痴ぶりは、一度再開した米国産の牛肉輸入を再度禁止した台湾政府の態度とは対照的である。
6. 結語
今回の BSE 患畜確認は、米国生まれの牛も汚染されていたと云うよりも、たった1頭でUSDAの BSE 検査方法の不備、NVSL/検査官の倫理の不在、報告制度の欠如等、これまでの米国の BSE 検査・汚染防止態勢の信頼性を根本から覆すものであった。
患畜確認前後のUSDAの迷走は、BSEのように産業上重大な家畜の疾患を米国内では確定診断出来ないという技術水準の低さだけでなく、危機管理の認識が欠如していることを露呈した。
フランス型の異常プリオンの検出は、カナダから輸入された1頭目とは異なる汚染源の存在を示唆しており、米国での BSE汚染問題は単純ではない事が判明した。米国は「臭いものに蓋」と云う態度を改めないと BSE撲滅迄長期間を要する可能性がある。
食肉に関しては、米国産の牛のBSE汚染確認に伴って米国のBSE監視態勢の信頼性が崩壊したにもかかわらず、農水省が示した寛容な反応は、日本の米国産牛肉の輸入再開は時間の問題という事を示唆している。
米国産の牛等由来原料の医薬品原料に関しては、厚労省による輸入禁止措置後にあったオーストラリア産 FBS等の価格高騰等一部のパニック現象も沈静化してきたので、今後も厚労省が米国産を使用解禁にする経済的必然性はない。米国で薬害 vCJD が発生しないことを確認してから米国産を解禁しても遅くはない。
湯川隆夫
Quality Quest Australia Pty. Ltd.
(qqa@netspace.net.au)
(19 July 2005)